受け身がうまくなると地面が近くなる

普通、バランスを崩した人というのは反射的に手をついて体を支えようとします。
このとき手首を痛めたりすることがよくあります。
また、倒れるときの衝撃に備えて体が緊張したりもします。
緊張することで余計な怪我も増えてしまいます。


受け身に慣れると転ぶことの恐怖が完全になくなります。
倒れることが怖くなくなると地面がすごく近く感じるようになります。
立っていても座っているような感覚が体に残ります。
体のバランスが崩れても弛緩したままでいられます。
倒れながら落ち着いて次のことを考える余裕が生まれてきます。
倒れないようにするのではなく、倒れる力を利用して起き上がった方が効率的だと考えるようになります。

受け身には三種類ある

  1. 体を丸めるなどして転がり、倒れる力を回転運動に変える
  2. 地面や床を叩いたり、手足でうまく力を吸収して倒れる力を相殺する
  3. 体を完全に弛緩させて筋肉の弾性を使って衝撃を吸収する


下にいくほど難しく、身体操作的に高度です。

回転運動に変える

柔道や合気道で教えられる回転受け身です。
はじめは回るだけですが、技量が上がれば回転する運動を利用して立ち上がったり相手を投げ返したりできるようになります。
捨て身技はこれの応用ですね。

相殺する

柔道では受け身で羽打ち*1をします。
これはわりと簡単に覚えられ、効果の高い方法です。
だんだんと衝撃の殺し方が分かってくると叩く必要がないことに気付いてくるはずです。
手の速度と床の速度に差があるから叩いてしまうわけで、手が床に触れた時に速度が一致していれば(あるいは近い速度ならば)音は出ないはずです。
この場合、衝撃の吸収は肩や体幹部で行います。
体が緊張していると関節に直接衝撃がきてしまうため、ほどよく弛緩することが大切です。
手以外にも同様のことが足でもできます。
武器を持ちながらの受け身では足が大活躍です。

体の弾性で吸収する

受け身は失敗することが大切です。
うまく回転できなかったり、手や足で衝撃を抑えられなかったときにそれを学ぶ機会があります。
手や足で衝撃を相殺できるということは、同じことが体幹部でもできるはずです。
実は完全に弛緩した状態だと大して受け身を取らなくてもダメージは受けません。
さすがに顎を引いてある程度は体を保護する必要はありますが、体幹部や手足から落ちた場合は弛緩するだけで大丈夫です。
何をやっているかを言葉で説明するのは難しいのですが、ロシア武術システマにおける相手のパンチを受ける稽古と似た感じです。
打撃を受けるときに弛緩していれば、案外衝撃は少ないものです。

*1:手で畳を叩いて衝撃を殺すこと。