バガボンド25巻の感想

バガボンド 25 (25)
バガボンド 25 (25)
posted with amazlet on 07.04.18
井上 雄彦 吉川 英治
講談社 (2007/03/23)
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ちょっと遅いですが、バガボンドが相変わらず凄いので感想を書いてみます。

伝七郎を仕留めた動きに関して

一太刀目が浅いと感じたため、さらに接近して相手の脇差を奪い、腹を割くという動き。
おそらく、この動きは武蔵本人も意識してやったわけではないと思います。
むしろ、体が自然とそのときの最適解を導いたのだと思います。


私も似たような体験をしたことがあります。
あるとき、剣術の演武をしているときです。
相手の剣を地面に落とすとき、誤って自分の持っていた剣を取り落としてしまったことがありました。
そのとき私は咄嗟に相手に四方投げをかけつつ体を落とし、投げながら剣を拾っていました。
相手が地面に倒れたときには私はもとの姿勢に戻り、剣を突きつけている状態でした。
後に聞いた話によるとまったく不自然に見えなかったそうです。
このとき、私はまったく動きを意識していませんでした。
気づいたら相手は寝ていて自分は剣を持っている状態でした。

二人の一年間は何が違ったか

まず、稽古法。
武蔵のしてきたことを考えてみると、課題を設定し、それに対し取り組んでゆく方法を取っていることが分かります。
一方、伝七郎の場合は一見特別な稽古をしているように見えますが、個々の稽古の中で課題があるかどうか不明瞭です。


次に意識。
武蔵はおつうへの思いもあるようですが、確実に剣自体に思いを馳せています。
一方、伝七郎は仲間や兄、道場に思いを馳せているように思えます。


結論として、二人は気質的な要素はあるにしてもまったく別の考え方をしていたわけで勝負の結果は見えているような気がします。
これはどちらが良い悪いではないと私は思います。
伝七郎は武芸者としてはいまいちとしても、道場主としてはかなり優秀だと私は感じました。
私が清十郎と伝七郎の父親だとしても伝七郎の方を跡継ぎにします。

伝七郎が勝つ方法はあったか

結論から言うと”ある”と思います。
ただし、彼が生き残ることは逃げない限りは絶対に不可能です。
つまり相打ちを狙う以外に勝機はありません。
武蔵の動きがいくら俊敏だとしても、体躯の大きさ、力の強さは伝七郎が勝っているように思えます。
武蔵が飛び込んできたときに伝七郎がもう少し早く気づければ相打ちだったと私は感じました。

最後に

凄い漫画だと思いますけれど、やはりエンターテイメント色はあるように思えます。
しかし、ここまで掘り下げて描写できるのはあらためて凄いことだと感じました。
漫画という静止画の媒体だから一瞬一瞬をクローズアップして描けるのでしょうね。
これが動画だったら、瞬時に終わってしまって普通の人では意味が分からないでしょう。